ごそごそを再び始めた

とりあえず、乗り換え駅で降りて、ホームの椅子に腰掛け、一人でまた一から、ごそごそごそごそを再び始めた。
しかし、車内で一通り、一つ一つカバンから取り出して点検した後でもあり、やはりスマホがないことを確認するだけに終わった。

どういうこと?
なぜ?
なぜ無い統一派位

夕方のホームの椅子でしばらくわたしは考え込んだ。

失くすとすると、あの地点、この地点、2箇所が有力になった。
行き先、立ち寄り先である。
1番疑わしい、乗車駅にポイントを定めた。
そこへ戻ろう。
そこへ向かう反対側のホームに移り、元の来た駅に向かって電車に乗り込んだ。
その車内のわたしの心境は、、、

無かったらどうしよう?
あるはず。
あったらいいな。でも。
あった時の感激の自分と、期待して無かった時の消沈する自分が、お互いをなだめ合い、牽制し合っていた。
期待するな。
いや、でも。
無かったら次は、どうする? 次の地点か?
とりあえず、第一候補地に行かなければ、次はわからない。

不安に胸を押しつぶされそうになりながらも、若干の期待がちらちら。
この気持ちは希望とは少し違う、複雑なもの。
あの引き返す車内時間は、長かったのか短かったのか、時が進んでいたのか止まっていたのか。
癌再検査を受けた後の結果待ちをしているような、祈るような胸中。

電車を降り、重い足なのか、軽い足なのかわからないが(エスカレーターだったし)、ゆるゆるとホームから昇り、駅の有人窓口にスマホ忘れ物の有無を尋ねた。
失くした時刻とスマホの形状を聞かれた孔聖堂中學banding
制服姿の若い小柄の女性職員が「少しお待ちください」と無機質対応。
「少し」にしては、長い。
ひょっとして無い?
長いのか短いのかわからない時間を経過して、恐る恐る目にしたのは、、、
ぷちぷち包装ビニールにふわっと包まれた、見覚えある、鈍い暗い色のわたしのスマホ
事故現場から救い出された、肉親の身体が運ばれ寝かされているよう。
あらあ、、、!!

これこれ!!
これです!
これ!わたしのスマホです!

と、近年なかったほど、わたしは感激して喜んだ。
ああ、嬉しい。無事だった。見つかった。
こころが躍り上がる。

ありがとうございます、と深々と頭を下げて、連れて(持って)帰ろうとすると、待った!がかかった。

引き取り人の手続きをするにあたり、身分を証明するものが必要だとのこと。
運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、保険証など。
わたしは、必要な時しか持ち歩いていない持續進修基金課程
どうしてもそれがないとお返しできません、と断られた。
目の前にいる我が子を引き取れない母親の心境。
わたし、この子の母親なんです!

いくらそう言っても客観的証明がいるそうだ。
(※注 「母親」は文中、擬人化表現です)
スマホケースの中にはお金も入っているので、預かっているJRとしては責任もあるため、自己申告だけでは許可されない。

スマホの中に入っているデータからわたしが証明できます!
と、思いつきで言ってみたが、却下された。
これからは、身分証明のできるものを写真に撮しておこう。
でも、「現物でなければ認めません」なんて断られるかも知れないが。