からないはずだ

 そうしたら、見張りの兵士が怒り狂って追いかけてきた。
 必死に逃げた。
 奴は、日本語が分からないはずだ。
 しばらくは謎だったが、やがて、謎が解けた隔空無針埋線

 「マンビー」は、「盗む」という意味だった。
 「万引き」を「マンビー」と聞き違えたのだ。
 「盗もうぜ」と言えば良かった。

 おかしなもので、
 相手が日本語を分からないと知っていながら、
 「盗む」という直接的な言葉を使うことに、ためらいがあったのだと思う。
 心に負い目があって、墓穴を掘った產前準備

 使いどころの無いロシア語をまた一つ、生徒たちは覚えた。


 月日は流れ、二年十三組の生徒たちは、全員無事に進級し、卒業していった。
 さらにその二年後、
 早見先生が亡くなったという風の噂を聞く。
 病死だった。

 二年十三組の生徒だった子どもたちは、成長して大人になり、
 過ぎてゆく人生の途中で、ふと思いだす者が出る。

 天に両手を突き上げたりする薄扶林通渠

 ヨイサーッ